10.手動式トルクレンチ
 
 
〔用途〕
◆ボルト・ナットなどねじの締め付けトルクを測ったり、決められたトルク値に締める場合に使います。
 
〔特徴〕
◆一般にボルト・ナットなどねじを使った締結には、ねじの用途、種類、大きさなどに応した締め付け力が要求され、その代用特性としてトルクがあります。
 通常の締め付けにはスパナなど一般の工具が用いられ、そのトルク値は正確には測定されていません。
 トルクを測定しながら締め付けたり、予め設定したトルク値に締め付けたりする、簡便で能率的な工具が手動式トルクレンチです。
 
◆PL対応要素として、ねじの「適正締め付けトルク」があります。その測定や管理に使われる代表的工具にこのトルクレンチがあげられます
 
◆締め付けトルクとは、ボルト・ナットなどを締め付ける時に必要な回転モーメントのことを言います。
 
◆トルクとは、「力」×「長さ」で表わされる「力のモーメント」です。
 その単位は重力単位では、kgf・m、kgf・cm等があり、SI単位では、N・m(ニュートン・メートル)です。
1kgf・m=9.807N・m  1N・m=10.197kgf・cm
 
〔種類〕
◆JISでは、次の4種類が規定されています。
等級はダイヤル形のみ精密級と普通級が設定されています。用途に応じて使い分けます。
 レンチサイズを表わす“呼び”は測定できるトルクの範囲の最大値を言います。例えば測定できる範囲が500〜2800kgf・cmのものは呼び2800です。
 
プレート形
アームが力に応じてたわみ、ヘッドに固定の指針が動き、プレートの目盛でトルク値を表示します。JISは呼び230〜10000まで11種類あります。
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ダイヤル形
トルク値をダイヤル形の目盛で読むようにしたものです。
置き針式で測定値が読みやすくなっているものもあります。
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プレセット形
調節式の値の中から希望する値を予めセットしておき、トルクがその値に達した時、音や感触などで分かるようにしたものです。
 グリップ部で調整するものや電気的にデジタル部でセットするものなどがあります。
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単能形
ある値だけで使うように設定されたものを言います。
設定値は、対象物の締め付けトルクで設定され、通常は変更できません。
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〔使い方〕
◆トルクレンチに力を加える場合は、必ず手方中心をハンドルの指定位置(中央部)にします。
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◆トルクレンチは作業工具ですが、測定具の仲間として丁寧に扱います。常に点検手入れを心掛け、使用頻度に合わせ定期的に精度検査を実施します。
 
◆プレート形やダイヤル形は無負荷時に指針が0位置にあるか確認してから使用します。
 
◆プレセット形で希望値に設定する場合は、使用前に取扱説明書をよく読んで使用能力範囲内で丁寧に行います。(グリップを回してトルク値を設定するものは範囲を超えて回すと故障することがあります)
 
注意
1. 「締め付けトルク」と「ねじの締め付け力」との関係はねじの状態や構造、摩擦係数等によって異なります。必ず対象物の作業指示書や注意書をよく読んで正しい作業をして下さい。
2. トルクレンチは力を加える位置(握る位置)と方向によってその値が狂うことがあります。
3. 精密に調整されていますが、衝撃を与えたり分解しますと精度が狂います。また高温多湿、水の中、ほこりの多い場所などで使用やや保管をしないで下さい。
4. 測定範囲を超えて使うと故障します。場合によっては破損し、怪我をすることもあります。
 
◆締め付けトルクとねじの初期締め付け力との関係は、ねじの状態等によって異なるため、その管理は容易ではありません。
 代表的な締め付け管理方法を紹介しますが、詳しく知りたい方は専門書などをお読み下さい。
・・・・・・・・・・・・ 参 考 ・・・・・・・・・・・・
トルク法(トルク締め付け管理法)
トルクレンチだけで締め付けトルクを管理する簡便法です。予め使用状態やねじ条件を加味して初期締め付け力を推定する方法です。
回転角法
所定のトルクまで締め付けて次に指定された回転角たけ増し締めする方法です。
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その他
トルク勾配法などがあります。